令和7年度「大分県訪問介護事業所支援事業(経営改善支援事業)」において、当社が経営支援を行う事業者として選ばれ、代表の秦が大分県内の訪問介護事業所10か所に対して経営支援(コンサルティング)を行いました。
この事業は、訪問介護サービスについて持続的な経営に向けた経営改善を図り、地域に必要な介護サービスを利用者が安心して受けられるサービス提供体制を確保することを目的としています。
経営改善といっても、事業所によって抱えている課題は異なります。
利用者の確保、売上の向上、人材不足、スタッフの採用や定着、業務効率化など、数字に表れる課題もあれば、事業所の方向性やスタッフの考え方など、数字だけでは見えてこない課題もあります。
今回の支援では、それぞれの事業所の状況を確認しながら、その事業所に合った経営改善を一緒に考えてきました。
このブログでは、その中で生まれた気づきや変化、実際に取り組んだことを「経営支援実践報告」として紹介していきます。
なお、事業所が特定されないよう、記事内の事業所名はすべて仮名としています。
今回ご紹介するのは、日田市の「ヘルパーステーションひかり」(仮名)です。
ヘルパーステーションひかり(仮名)は、開業して2年が経過した訪問介護事業所です。
開業してからの2年間、日々の訪問介護サービスを提供することに一生懸命取り組んできました。
しかし、毎日の業務をこなすことが精いっぱいで、経営についてじっくり考える余裕がない状態でした。
経営支援を始めたときには、事業所が赤字であることも報告されました。
スタッフの皆さんとは、「赤字だから、もっと頑張っていこう!」と話していたそうです。
もちろん、頑張ることは大切です。
しかし、私はこの話を聞いて、ある疑問を持ちました。
「何を、どのように頑張るのでしょうか?」
利用者を増やすのでしょうか。
訪問件数を増やすのでしょうか。
スタッフの働く時間を増やすのでしょうか。
それとも、サービスの内容を見直すのでしょうか。
目標や方法が明確でないまま、ただ「頑張ろう」と言い続けても、スタッフの忙しさが増えるだけかもしれません。
そこで今回の経営支援では、頑張る量を増やすのではなく、「何のために、何を、どのように変えていくのか」を考えることから始めました。
訪問介護事業所の経営において、売上は非常に重要です。
売上がなければ、スタッフに給与を支払うことも、事業を継続することもできません。
しかし、売上を上げるために、単純に訪問件数を増やせばよいのでしょうか。
私は、そうではないと考えています。
例えば、同じ1時間の訪問介護でも、利用者に提供するサービスの内容によって、介護報酬は異なります。
また、利用者にとって本当に必要な支援が何なのかを考えず、これまでと同じサービスを繰り返しているだけでは、利用者の生活に十分な変化を生み出せない可能性もあります。
そこで、経営支援の中で改めて考えていただいたのが、
「訪問介護は、利用者に何を提供する仕事なのか?」という問いです。
掃除でしょうか。
調理でしょうか。
買い物でしょうか。
もちろん、これらは訪問介護の大切な仕事です。
しかし、訪問介護の本来の目的は、単に利用者の代わりに家事を行うことだけではありません。
利用者が持っている力を活かし、できるだけ長く住み慣れた自宅で生活できるように支援すること。
そのために、私たちホームヘルパーは何ができるのか。
ここから、事業所の経営改善を考えていきました。
訪問介護の現場では、利用者や家族がホームヘルパーの役割を十分に理解していないことがあります。
「ヘルパーさんは、頼んだことを何でもしてくれる人」
そのような認識でサービスを利用していると、ヘルパーができることと、利用者や家族が期待していることに違いが生まれてしまいます。
その結果、小さなトラブルにつながることもあります。
そこで今回の研修では、ホームヘルパーの役割を分かりやすく説明することの重要性を共有しました。
例えば、掃除をする場合でも、すべてをヘルパーが行うのではなく、利用者ができることを一緒に考えてみる。
利用者自身ができることは何なのか。
どのような支援があれば、自分でできることが増えるのか。
そのような視点でサービスを考えていくことが大切です。
そして、なぜその支援が必要なのかを、本人や家族、ケアマネジャーなどの関係者へ説明する。
そのための方法として、紙芝居やチェック表、写真、動画などを活用することも検討しました。
専門的な言葉だけで説明するのではなく、誰にでも分かりやすく伝える。
自分たちの仕事の価値を理解するだけでなく、その価値を相手に伝えることも、経営改善につながる大切な取り組みです。
研修で学んだことを、実際の現場でも取り組んでいただきました。
最終アンケートでは、「ご本人・ご家族に説明するための資料を作成し、必要な方には実施することができてきています。」という報告がありました。
さらに、サービス内容にも変化が生まれました。
経営支援がはじまり3ヶ月で「生活3」でサービスを提供していた利用者のうち、6名について「身体1生活1」へ変更になったとの報告がありました。
これは、単純にサービスの単価を上げるために変更したということではありません。
利用者の状態や必要な支援を改めて確認し、本人や家族、関係者と共有しながら、サービス内容を見直した取り組みです。
訪問介護では、提供するサービス内容によって介護報酬が異なります。
そのため、利用者に必要な支援を適切に評価し、実際の支援内容に合ったサービスを提供することは、結果として事業所の収益にも関わってきます。
ただし、サービス区分は自由に変更できるものではありません。利用者の状態やケアプラン、訪問介護計画、実際の提供内容、算定要件などに基づいて適切に判断する必要があります。
利用者にとって必要な支援を適切に提供することと、事業所が適正な介護報酬を得ること。
この二つを両立させることが、持続的な訪問介護事業所の経営につながると考えています。
今回の経営支援では、サービス内容の見直しだけでなく、実際の支援方法にも変化が見られました。
研修で紹介した紙芝居を参考に、事業所でも紙芝居を作成したそうです。
さらに、体操ができる利用者とは、ラジオ体操や口腔体操などを一緒に行う取り組みも始まりました。
これは、私が経営支援の中で大切にしていることの一つです。
「できないことを代わりにする介護」から、「できることを活かす介護」へ。
もちろん、すべての利用者に同じことができるわけではありません。
一人ひとりの身体状況や生活環境、本人の希望に合わせて支援を考える必要があります。
しかし、利用者が持っている能力を活かすという視点を持つことで、ホームヘルパーの仕事の幅は広がっていきます。
利用者ができなかったことをできるようになる。
今まで難しかったことに挑戦できるようになる。
そんな小さな変化を一緒に喜べることも、訪問介護の大きな魅力ではないでしょうか。
ヘルパーステーションひかり(仮名)には、10名のホームヘルパーが在籍しており、そのうち7名が介護福祉士の資格を持っているとのことでした。
介護福祉士は、介護に関する専門的な知識や技術を持つ国家資格です。
しかし、資格や経験があっても、その専門性を十分に活かせていない場合があります。
例えば、掃除や調理などの作業をこなすことだけが仕事になってしまうと、介護の専門職としての役割を実感しにくくなることもあるでしょう。
今回の研修を通じて、訪問介護の目的や自立支援の考え方を改めて学ぶことで、スタッフの皆さんにも変化が生まれました。
研修後には、ヘルパーのやりがいやモチベーションが上がり、以前より利用者のことを考えられるようになったという感想をいただきました。
私は、これも経営改善の大切な成果の一つだと考えています。
スタッフが仕事にやりがいを感じ、自分たちの専門性を発揮できる。
それが利用者へのより良い支援につながる。
そして、事業所としての価値が高まっていく。
スタッフのやりがいと事業所の経営は、決して別々の問題ではありません。
今回の研修では、コミュニケーションについても学んでいただきました。
そこでお伝えしたのが、「話させ上手」という考え方です。
話し上手や聴き上手という言葉はよく聞きますが、私は相手が自然と話したくなるような質問ができる「話させ上手」も大切だと考えています。
研修後には、「話させ上手になれるよう、習ったことを実践していきたいです」という感想も寄せられました。
利用者の話をただ聞くだけでなく、質問によって相手の思いや考えを引き出していく。
そうすることで、これまで知らなかった利用者の一面を知ることができるかもしれません。
利用者のことを深く知ることは、より良いアセスメントや支援につながります。
訪問介護の質を高めるためにも、コミュニケーションは非常に重要な技術だと考えています。
今回の経営支援を振り返って、最も大きな変化は、経営に対する考え方だったのではないかと感じています。
支援開始時には、赤字という状況に対して、
「もっと頑張ろう」という言葉がありました。
しかし、頑張ること自体が目的になってしまうと、スタッフは疲弊してしまいます。
大切なのは、頑張ることではなく、「何を変えれば、利用者にとっても事業所にとっても良くなるのか」を考えることです。
今回の支援では、次のような具体的な行動が生まれました。
- 訪問介護の目的を見直す
- ヘルパーの役割を利用者や家族へ説明する
- 利用者に必要なサービス内容を確認する
- 紙芝居や体操などを活用した自立支援に取り組む
- スタッフの専門性やコミュニケーションを高める
これらは、一つひとつを見ると小さな取り組みかもしれません。
しかし、経営改善とは、このような行動を積み重ねていくことではないでしょうか。
今回の経営支援では、次のような感想をいただきました。
「今まで何年も訪問介護に携わってきましたが、考え方は方向性が違い、ただただ驚くばかりでした。」
「ご本人・ご家族に説明するための資料を作成し、必要な方には実施することができてきています。」
「6名の方が生活3から身体1生活1に変更になりました。」
「ヘルパー10名のうち7名が介護福祉士で、モチベーションが上がりました。」
「紙芝居を作ったり、体操のできる利用者の方と体操を行うように取り組んでいます。」
「話させ上手になれるよう、4W2H1Aを実践していきたいです。」
特に印象に残った声
「ただ闇雲に頑張っても、忙しいだけで疲弊してしまっては本末転倒。」
今回のヘルパーステーションひかり(仮名)への経営支援で、私が改めて感じたことがあります。
それは、「頑張ること」と「経営が良くなること」は、必ずしも同じではないということです。
赤字だから頑張る。
利用者が少ないから頑張る。
人手が足りないから頑張る。
もちろん、経営には努力が必要です。
しかし、何をどう変えるのかが分からないまま努力を続けても、経営が改善するとは限りません。
だからこそ私は、経営支援の中で「なぜ?」という問いを大切にしています。
なぜ、売上が上がらないのか。
なぜ、このサービスを提供しているのか。
なぜ、利用者はこの支援を必要としているのか。
そして、「私たちの事業所は、利用者にどのような価値を提供しているのか?」ということです。
今回の支援では、その問いから訪問介護の役割を見直し、説明資料の作成、サービス内容の見直し、自立支援の実践など、具体的な行動へとつながりました。
さらに、スタッフのやりがいやモチベーションにも変化が見られました。
私は、経営改善とは単に売上や利益を増やすことだけではないと考えています。
利用者にとって良い介護を提供し、スタッフがやりがいを感じ、その結果として事業所が持続的に経営できること。
この三つが同じ方向を向くことが、本当の意味での経営改善ではないでしょうか。
今回のヘルパーステーションひかり(仮名)の取り組みは、その第一歩となる実践事例だったと思います。
介護支援コンサルタント秦邦仁は、大分県内の訪問介護事業所をはじめとする介護事業所の経営支援、職員研修、セミナー・講演などを行っています。
- 訪問介護事業所の赤字を改善したい
- 売上を上げたいが、何から始めればよいか分からない
- スタッフのやりがいやモチベーションを高めたい
- 利用者に必要なサービスを適切に提供できる事業所をつくりたい
このようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
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※本記事は、支援先事業所からのアンケート回答や実践報告をもとに作成しています。事業所名は仮名です。また、同様の成果を保証するものではありません。








