結婚して60年以上が経つ。今はひとりだが、数年前までは夫とふたり暮らしだった。
夫が介護状態になり、家にヘルパーさんが来るようになった。
家の中に知らない人(ヘルパーさん)が来ることに最初は抵抗があったが、だんだんと慣れてきてヘルパーさんの来る日が待ち遠しくなっていった。
そんなある日、夫の誕生日に、ヘルパーさんから誕生日プレゼントを頂いた。
誕生日おめでとうございますと書かれたメッセージカードには、夫の名前の下に「まゆげさん」と書いてあった。
私はその「まゆげさん」の意味が分からなかったので、ヘルパーさんに聞いてみた。
すると、それは夫の小学校の頃のあだ名だった。
夫がお風呂に入るのをヘルパーさんに手伝ってもらっていたので、その時に話してくれたらしい。
結婚して60年以上経って、初めて聞いたあだ名だった。
長く一緒に居ても知らないことがあるんだな~と思いつつ、夫を見て「まゆげさん」と呼んでみた。
すると、今までにない笑顔で笑ってくれた。
それからは、たまに「まゆげさん」と呼ぶようにしていた。
すると、毎回、夫は笑ってくれた。
そんな夫も亡くなり、私は今、ひとり暮らし。
今は私のためにヘルパーさんが来てくれている。
ヘルパーさんは、まだ私のあだ名は知らない。
※
今年に入ってからヘルパーが訪問させて頂いているM様の日記です。旦那様の時も当社からヘルパーが訪問しており、今回M様にヘルパーが訪問するようになったので、以前のことを思い出して書いたそうです。素敵なエピソードなので掲載させてもらいました。(本人の許可をとって掲載しています)