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 仕事から志事へ

2012/02/16
★介護士日記

ディズニーランドの有名な話を紹介します。




 




ある日、インフォメーションにひとりの男性が暗い顔でやってきました。




 




「あの‥‥落とし物をしてしまって」




 




「どういったものでしょうか?」




 




「サイン帳です。子どもがミッキーやミニーちゃんのサインが欲しいって、




園内のいろんなところを回って書いてもらったものです。あと少しで




キャラクター全員のサインがそろうところだったんですが‥‥」




 




インフォメーションにサイン帳は届いていませんでした。心当たりの




場所にもかたっぱしから電話をかけてみましたが、どこも届いていないという返事でした。




 




「ご滞在はいつまででしょうか?」




 




「2泊3日のツアーに参加しているので、2日後のお昼には帰ることになっています」




 




 




「では、このあともう少し探してみますので、お帰りの前にもう一度こちらに




お立ち寄りくださいますか? それまでには見つけられると思いますので」




 




そのキャストはサイン帳の特徴を詳しく聞き、男性を送り出しました。




 




男性が帰ったあと、さらにいくつかの小さいセクションに電話をしました。




サイン帳のことを伝え、さらにほかのキャストにも声をかけてもらって、




大勢でパーク内をいっせいに探して回りました。




 




ところがどうしても見つからなかった。キャラクターのサインがある




サイン帳だから、誰かがそれを拾ったとき、うれしくて持って帰って




しまったのかもしれません。




 




2日後、この間の男性がインフォメーションに現れました。




 




「どうでしたか?」




 




たぶん見つからなかっただろう、という口ぶりでした。




 




キャストは残念そうに答えました。




 




「大変申し訳ございません。全力で探したのですが、サイン帳を見つける




ことはできませんでした。しかしお客様‥‥」




 




1冊のノートが差し出されました。




 




「どうぞかわりにこちらのサイン帳をお持ち帰りください」




 




渡されたノートを開いてみると、そこにはなんとキャラクターのサインが




書かれていました。しかもキャラクター全員分のサインがちゃんとそろっていたのです。




 




キャストは落としたサイン帳と同じものを店で見つけてきて、いろんな




エリアを歩き回り、キャラクターたちにサインを書いてもらったと説明しました。




 




男性は顔をくしゃくしゃにして喜び、何度も何度もお礼を言って帰りました。




 




 




この話はこれで終わりではありません。




 




後日、一通の手紙が届きました。




 




 




先日はサイン帳の件、本当にありがとうございました。




 




じつは連れてきていた息子は脳腫瘍をわずらっていて、いつ大事に至るか




わからないような状態だったのです。




 




息子は物心ついたときから、ディズニーのことが大好きでした。




 




「パパ、いつか絶対ディズニーランドに連れてってね」




 




と毎日のように言っていました。




 




私は、そうだね、行こうねと答えながら、でももしかしたら約束を果たせない




かもしれないと不安に思っていました。




 




命は、あと数日で終わってしまうかもしれない。だから、せめていまのうちに




喜ばせてあげたいと思い、無理を承知でディズニーランドへ連れて行きました。




 




その息子が、ずっと夢にまで見ていた大切なサイン帳を落としてしまったのです。




息子の落ち込みようは見ていて苦しくなるほどでした。




 




しかし、あなたが用意してくださったサイン帳を渡したときの息子の顔が




忘れられません。「あったんだね! パパありがとね!」と本当に幸せそうな顔でした。




 




ほんの数日前、息子はこの世を去りました。




 




ずっとサイン帳をながめていました。




 




「ディズニーランド楽しかったね。また行こうね」と言い続けていました。




 




眠りにつくときも、サイン帳を抱えたままでした。




 




もしあなたがあのとき、サイン帳を用意してくださらなかったら、息子はあんなにも




 




安らかな眠りにはつけなかったと思います。




 




息子はディズニーランドの星になったと思います。




 




あなたのおかげです。本当にありがとうございました。




 




 




手紙を読んだキャストは、その場で泣き崩れました。




 




・・・・・




 




落し物を一生懸命探しても見つからなかった。




 




そこで「申し訳ありません」と謝罪すれば、それで十分だった。




 




それでも今自分ができる事をした先に、この家族を救い両親の未来をも救ったのでしょう。




 




僕は思うんです。




 




このキャストは仕事として探したのではなく、お客様の力になりたい喜んで




頂きたいという【志】があったから、その心が両親は嬉しかったのでしょう。




 




会社に仕える【仕事】ではなく、人の幸せを考え志があったから仕事が【志事】になったのです。




 




初めは仕える仕事だっていい。




 




だけど今自分が誰かのために一生懸命になれば【仕事】が【志事】に必ず変わります。



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秦 邦仁
株式会社クローバー
代表取締役

2011年に大分市で訪問介護サービス「ヘルパーステーション介護のみかた」を開所。自宅で元気に長生きできる独自のシステムを開発し、高齢者の生活をサポートしている。また、介護支援コンサルタントとして、小学校から老人クラブまで年齢層に関係なく介護セミナー活動も行っている。

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